マトスポブログ

サハラマラソン参戦記録 vol.8(全3ページ)

2日目の終わり

テントに戻ると大阪のS和さん、福岡のF岡さん、留学生のRくんが無事ゴールを果たしていた。
S和さんは足の状態が悪く、この日に小指の爪を失った。彼のビバークでの履物は前述した公式品で、今の足の状態でビバーク内を歩くと石等により激痛を味わう。
彼には朝夕とフットケアのクリームをいただいていたので、恩返しとして私の履物を共用として使っていただくことにした。

K池さんとRくんのゲーターは私と同じく接着剤を使用しており、2人ともすこぶる状態がよくない。
特にRくんは剥がれたゲーターをナイロン紐で縛っていたのだが、その紐先が避けてポンポンの様になっており、いかにも賑やかだった。
私も昨日修繕したゲーターが走行中にまた剥がれ始め、どうしようかと走りながら考えていたところによい案を思いついた。
何かの役に立つだろうと持ってきた幅12mm、口径12cmの極太輪ゴム。これをつま先と土踏まず付近に巻いてみた。
これがうまく嵌り、ゴムも大量にあったので2人にも勧めて使ってもらう。

潰した水ぶくれはキズパワーパッドをあてて自前のテーピングテープで固定。
足を洗う際に剥がした指のテーピングを、摩擦が起きないよう再び1本1本施していく。
テーピングの知識はほぼゼロなので、処置は適当である。テープを節約しつつ、悪影響がでないようにだけ気をつけた。

素人のテーピング ※黒のテープはチェックの日に昨年日本人1位のS村さんに教えていただき施したもの。

明日の準備も完了したので、食事の用意を開始する。
本日のビバークは窯になるような石もなく、どうせ湯を沸かすだけなので風除けにアルミホイルを巻くだけの手抜きで済ませる。
五徳の下の着火剤に火をつけたティッシュを放り込む。

薪をくべていき、2度お湯を沸かす。
1度目のお湯はアルファ米2パック分(白米、松茸ごはん)。2度目の分はフリーズドライ製品等に使用。私の好物であるビーフハヤシ(白米にかける)と赤だし、そしてコーヒー用だ。
アルファ米は出来上がりに15分かかるので、2度目のお湯はそれを見越して10分後に沸かし始める。
好物揃いである熱々のハヤシライス、松茸ごはん、赤だしは一日の疲れを癒してくれる。

食事後、薪を足して保温しておいたお湯でコーヒーを作る。
このコーヒーはインスタントではあるが、コーヒーのテイスティング大会で日本2位になった友人が自信を持って勧めてくれた逸品である。
そしてささやかな楽しみとして持ち込んでいたマーブルチョコをコーヒーとともに一日の締めとしていただく。
普通のチョコレートをサハラに持ち込むとすぐに溶けて駄目になってしまうが、
マーブルチョコは飴でコーティングされており、チョコが溶けても固形を保てるのである。ちなみに筒状の33g入り1本を持ち込み、一日辺り6個食べることができる。
栄養的には微々たるものであるが、こういった”ご褒美”が堪らなく嬉しく、また活力となる。
マーブルチョコ1個を口に含み、コーヒーを流し込んでゆっくりと味わう。最後は贅沢に2個まとめて口に放り込んだ。

さて、これでいよいよ本日は寝るだけになったのだが、53番テント7名のうち2名がまだ戻ってこない。
時刻は21時。制限時刻の11時間からすでに1時間以上が過ぎている。彼らの状況が分からず心配するテントメンバー。
と、そこにデビーさんが現れる。
彼女は私たちの心配を察してくれていたのか、2名の現在の状況を伝えに来てくれたのだ。
先ず、2名はゴールを果たしていた。昨日に続き本日も制限時間が1時間延び、それに助けられたそうだ。
そしてここに戻っていない理由だが、埼玉のS本さんは足の状態が非常に悪く、ゴール後メディカルに直行したという。
岩手のS藤さんはゴール直後、行動不能に陥りそのままメディカルテントに搬送されたという。
S本さんはまだしも、詳細の分からないS藤さんの容態が気にかかる。

一先ず2人の消息が知れたので、寝袋に入り彼らの帰りを待つ。
時刻はわからないがうつらうつらとしていた頃、彼らが無事テントへと戻ってきた。

S本さんは昨日トラブルに見舞われた足が悪化していた。痛んだ足で無理やり押し進んできたようだ。
S藤さんは元気そうに見えるが、ゴールして安心した途端に体の力が抜けてその場から一歩も動けなくなったという。
症状から察するに、低血糖状態からハンガーノックを起こしたのであろう。メディカルで点滴をうけて回復できたそうだ。

話もそこそこに彼らは足のケアと食事の準備を始める。
戻ったのが何時であろうが、明日のスタート時刻は変わらない。
時間はない。が、これらは必ず行わなければならない。でなければ明日レースは今日以上に辛くなるのだ。

テントのみなはそれがよく分かっており、彼らの妨げにならないようにそれ以上は話しかけずそれぞれ床に着いた。
私も、彼らのヘッドライトの灯りが早く消えるのを願いつつ2日目を終えた。

夜間すでにビバークが静まり返っている中、隣の54番テントが騒ぎすぎて向かいのモロッコ人テントから、「シャラップ!」と怒りを買っていた。
キャンプに来ているわけではない。誰しもが明日のレースへ向け真剣なのだ。

競技結果

4月7日 第2ステージ 41km/制限時間 11時間 → 12時間
出走/1009名(うち日本人38名)
完走/983名(うち日本人36名)
リタイア/26名(うち日本人2名)

No.1024 ONISHI Motoki
タイム 9:19:34
順位 823/983位

各ポイント通過時刻
スタート/8:42:06
第1チェックポイント(11.5km)/10:21:59
第2チェックポイント(14.5km)/13:39:17
第3チェックポイント(8.1km)/15:48:44
ゴール(6.9km)/18:01:40

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