マトスポブログ
サハラマラソン参戦記録 vol.18(全3ページ)
ワルザザートへ
バスには日本人選手が多く、先程乾杯をしていた選手達も乗車。赤い顔をしている・・う、羨ましい。ホテルに着いたら私も祝杯をあげなければ。
バスはこのあと宿泊地であるワルザザードに向う。どのくらいの距離なのか、何時間くらいかかるのか私達にはよくわからない。
ワルザザート泊はサハラマラソンの常だが、毎年コースが変わるので出発地からの時間が読めないのだ。
だがバスの中は非常に居心地がよく、何時間かかろうとかまわないといった雰囲気だ。
私が密かに恐れていたことがある。過去の大会でこのバスに乗った選手がバスの中に蔓延する”獣の臭い”に参ってしまったという。
だがゆっくりとレースを終えたおかげかこのバスは乗車率が低く、また体臭の比較的少ないアジア人が多かったため全く気にならない。
安堵した一方、恐れと同時にどれ程のものか楽しみにもしていたので少々残念だ。
出発時に行きのバスと同じ軽食が配られる。やはりやたらしょっぱいジャーキーの印象が強い。
バスは何台かの車両と隊列を作って進む。自転車ロードレースの審判やチームカーの車列を思い出す。
山を越えてゆく道からの眺めは日本とはまた一味違う。席を立ち反対側の窓から見える絶景を楽しむ。
しばらくしてトイレ休憩のためバスが停まる。
トイレのための施設はまたしてもどこにもない。つまりそういうことである。男性はみな横並び、女性はどうしていたのかわからない。
幾つかの街を越えて出発から4時間程経った16時半頃、なにやら大きな街に入る。どうやらここがワルザザートのようだ。
他の街がそうではないという訳ではないが、非常に清潔で美しい街だ。
やはり大きな都市のようで、ロータリーや大きな施設も多く見られる。バスはこれから選手が泊まる各ホテルを回るようだ。
選手だけでも千人を超えるので、幾つかのホテルに分かれて宿泊する。大体は国ごとになっているようだ。
日本人は全員、世界各国でチェーン展開しているibis (イビス)”ホテル泊。覚え易いので非常によい。
イビスには他に韓国やスペインの選手の一部も宿泊するようだ。
人心地
バスは同じような所をぐるぐる回り、遂に我らがイビスホテルに到着。日本ではまず見られない佇まいだ。
先に降りた選手が入口ではなくホテル左の駐車場へ向っている。見るとそこにはチェックの日に預けた荷物が並んでいた。
・・野晒し状態で。特にスタッフもいないし。おおらかだな、フランス人!まあいいんですけどね。
自分のスーツケースを見つけ、ホテルの中に入る。外観からは想像がつかないくらいシックな内装だ。
入ってすぐ普段着の日本人数人を見つける。リタイアになった選手達だ。
ずっと悩んでいたことがある。
同じ様に苦労して参加までに漕ぎつけながら力及ばずリタイアとなり、ワルザザードでただ待つしかなかった仲間達。
完走の嬉しさの反面、彼らとどう接すればよいのか分からなかった。
だから彼らを見つけたとき、一瞬固まってしまった。が、それらの心配はすぐに杞憂だったと分かる。
彼らの顔は澄み切り晴れ晴れとしている。恐らく我々を待つその間に色々なものを消化したのであろう。さすがここまで来た猛者達である。
我が53番テントでリタイアになった3人や私を助けてくれた52番テントのN嶋さんともここで再会を果たす。
彼らの幾人かはすでに来年の第30回大会への参加を決意し、リベンジに燃えていた。
積もる話の前にまずはチェックインを済ませる。私はリタイアされた東京のN森さんと同室のようだ。
エレベーターで部屋に向うと、すでに部屋は開いており2つ並んだ奥のベットに彼がいた。
移動などで行動がかぶることがなかったので、N森さんとはほとんど面識がない。
彼はフルマラソンをサブスリーで走る選手なので、走力で言えば私とは天地の程の開きがある。
だが彼は用意した装備がサハラに適さないところがあったようで2日目でレースを終えられたという。
私はゼロからのスタートだからこそ大いに恐れ、細心の注意を払えたことで完走ができたのかもしれない。サハラマラソンとはつくづく不思議なレースだ。
N森さんは私が気を遣わず済みように振舞ってくれている。ありがたいことだ。
そしていよいよ、待ちに待ったシャワーを浴びるときがやってきた!
バックパックも一緒に洗うため中身を全て取り出す。今後の移動の際にも使用するので砂を落としておかなければならないからだ。
浴室はトイレとボックス型のシャワールームが一緒になっているタイプ。
着ていたウェアは今は洗う気がないのでシャワールームの外に脱ぎ散らかす。
栓をひねり、石鹸片手にシャワーを浴びる。なんと気持ちのよいことか!人心地つくとはまさにこのことだ。
そして排水口に流れていく水の黒いこと黒いこと。片っ端から体を洗いまくる。
シャンプーも行い、バリバリだった髪の毛も柔らかみを取り戻す。
続いてバックパックだが、こちらも中々の難物で砂を落しきるまでには随分とかかる。
洗い終わったバックパックはシャワールでそのまま乾燥させる。
ちなみに脱ぎ散らかしたウェアの類いは後日自宅で手洗いをした。洗濯機だと恐らく砂で動作不良が起こりそうだからだ。
大きなタライを用いたのだが、結局タライの底に砂がなくなるまで4回の洗濯が必要になる程のしつこい汚れであった。
身も心もさっぱりし、スーツケースから汚れのない衣類を出して着用。はーーー落ち着く!
フカフカのベットに吸い込まれつつN森さんと雑談して過ごす。
WiFiが使えたので知り合いや同僚へ完走報告のメール送信を試みる。
だが画像を差し込みすぎたのか、はたまた回線が遅いのかタイムアウトになり送れているのか否かよくわからない。
まあいいか、またパリで試そう。やがて食事の時刻となったので1階のレストランへと赴く。