マトスポブログ

サハラマラソン参戦記録 vol.7(全4ページ)

第2ステージスタートとひとつの満足

私は全体の中盤からスタート。昨日より走っている選手が多いように見える。
私はというと、昨日とは違い自分を上手くコントロールできており、速度は小走り程度であるものの自身のペースを保てている。他人に翻弄されることはもうない。
食料を破棄したおかげでバックパックも随分軽く感じる。これはいけそうだ。

砂地の道を小走りで進み続け、

丘を登ると荒い石のある路面へと一変する。

走り易さ、というより足へのダメージを気にして轍の跡を行く選手が多い。私もそれに続く。

このとき、走りながら不思議な体験をした。
日本での練習中、通勤道やランニングマシンの上で、ここはサハラなのだと常に意識し、その光景を想像しながら走っていた。
それは本番での平常心のため、あるいは憧れから始めた行為であった。
その憧れのサハラを実際走っていたこのとき、私の目には通勤道やランニングマシンから見える光景が現れた。
砂の荒地が阪和道脇の歩道に見える。ランニングマシンの前で体幹トレーニングをするマトリックス自転車チームが見える。
もちろん、実際に見えている訳でも幻覚を見ている訳でもない。恐らく何度も何度も見たその光景を無意識に思い出し、それが重なってしまったのであろう。

なんだこりゃ!と、思わず吹き出してしまった。
おかしなものだ・・練習では本番を意識し、本番では練習を思い出し・・。
だが・・・目頭が熱くなった。
真剣に練習してよかった。辛かったけど毎日毎日練習してよかった。でなければこんな体験はできなかったはずだ。
サハラに来た目的。それとは別の、ひとつの満足を得た。

第1チェックポイント

さて、スタートからすでに1時間。呼吸を整えるため、少しペースを落とすと後方から何やら聴こえてきた。

振り返るとスピーカー担いだ56番テントのH田さんがマイケルジャクソンの「スリラー」をガンガンに流しながら走ってくる。
これが彼のスタイルで、バックパックに小型のソーラーパネルを装着し、スピーカーの電力を賄いながらエンドレスで音楽を発信するのだ。
イヤホンで聴くのとはまた違った趣きがあり、周りの選手も予想外のハプニングに喜んでいた。
彼は毎日、第1チェックポイントを過ぎた辺りで私を抜いていくことになる。ペースがころころ変わる私と違い、きっと一定のペースで保てているのであろう。

荒れ地を横切る涸れ川が見えてくる。ここは砂地でラクダ草が目立つ。
ラクダ草とはその名の通りラクダに関係がある。この草の枝は棘状になっており、これを食べるのはラクダくらい。だからこの名がついたそうだ。

高さは大きいもので膝くらい、多くの場合この様に群生している。私がベルベル人の行商から貰った薪もこれである。

さて、涸れ川を越えるとすぐに第1チェックポイントだ。チェックポイント自体はかなり前から視認できていたが、中々目の前まで来てくれなかった。
スタートからここまで1時間40分程。予想よりかなりかかったが良しとしよう。
チェックポイントの出口付近で腰をかける。すぐ近くにはH田さんがバックパックを下ろしてくつろいでいた。
あまりに爽やかな佇まいだったので思わずカメラに収める。防塵ビニールが映り込んだのはご愛嬌。

私が頭から水をかけていると、彼が注意喚起してくれた。零れた水が公式で購入したゲーターにかかっていたのだ。
このゲータは靴紐の辺りから足首までがジッパーで開閉できるようになっている。ジッパーにかかった砂が濡れると、乾いた際にジッパーがかんで壊れてしまうことがあるという。
ジッパーが壊れた状態で走れば砂は入り放題である。よいことを教えてもらえた。

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