マトスポブログ

サハラマラソン参戦記録 vol.3(全2ページ)

バスとスタッフ車両は隊列をつくり一路ビバーク(野営地)へと向う。
バスからの見える砂漠の風景に、みな興奮を抑えきれず乗り出すよう眺めている。が、日差しが強過ぎて直ぐにカーテンを閉める。

しばらくして2枚の用紙とロードブックが配布された。

用紙の1枚目はビバークの構成図。主催者テントやメディカル(医療)テントの位置。
選手テントの配置の標記もあり、日本人は51~56番テントを使用することになるらしい。
この番号内で自分が所属するテントを選べるらしく、どのテントに入るかを申告するための記入欄がある。
2枚目はフランス語がびっしりで、詳細はわからないが”kg”や”calory”の文字が見えたので所持品や食糧の内容を書き込むもののようだ。
この2枚への記入はこの場では必要ないようなので一旦脇へ置き、いよいよ待ちに待ったロードブックを開帳する。
前述の通りコースは事前に知らされておらず、今ここで初めて自分が走る距離や地形を知れるのだ。
一体どんなコースに仕上がっているのか、みな興味津々である。以下に今年のコースの距離とあらましを記載する。

  • 4月6日 第1ステージ 34km/制限時間 10時間
  • 4月7日 第2ステージ 41km/制限時間 11時
  • 4月8日 第3ステージ 37.5km/制限時間 10時間30分
  • 4月9、10日 第4ステージ 81.5km(オーバナイトステージ)/制限時間 34時間
  • 4月11日 第5ステージ 42.2km(マラソンステージ)/制限時間 12時間
  • 4月12日 チャリティーステージ 7.7km/制限時間 なし
  • 記録とは関係ないチャリティーステージを除き、合計6日間5ステージ距離236.2km

わかっていたことだが凄まじい。というか6日間の合計距離が通例よりちょっと長い気がする。
そのせいかチャリティーステージは8km弱と非常に短い。この分だとチャリティーステージ用に用意した補食は必要なさそうだ。
レースの展開を考える時間は明日たっぷり丸一日あるので、この場は大事なロードブックと用紙を失くさないようしっかり仕舞っておく。

しばらくしてトイレ休憩のためバスが停まる。
トイレのための施設はどこにもない。つまりそういうことである。男性はみな横並び、女性はどうしていたのかわからない。
バスは再び発車し、また2時間ほどして停車。時刻はすでに20時に近い。外はもう暗いだろうなと思いバスを降りるとそこには・・・

見たこともないような満天の星空!

思わず声を上げる。
私がサハラで楽しみにしていたことのひとつがこの星空。ちょうど月齢も新月に近く、日本ではまず見えないような星々も綺麗に輝いている。
トイレに行かずバスに残っていた者たちも雰囲気を察してか次々とバスを降り、各々砂漠の夜空を堪能する。
星空の撮影を行いたかったが機材はバスの格納庫。撮るチャンスはこれからいくらでもあるしまあいいか。

再出発後それほど時間を経ずしてバスはビバークへ到着。空港からは3、4時間といったところ。
例年ビバークへはバスで直接乗り入れるのではなく、ある程度の位置まで近づいたあとはトラックが用意され、その荷台にぎゅうぎゅうに詰め込まれて運ばれると聞いていた。
そのトラックの荷台でウケを狙おうと、わざわざドナドナ(荷馬車が~♪のあの曲)をiPhoneへ入れてきた私の立場はどうなるのだ。
軽くショックを受けつつ荷物を転がしビバーク内の日本人テントへと向かう。
ビバークにはすでに多くの参加者が到着しており、どうやら我々が乗ったチャーター便が最終の組だったようだ。

テントは8名用で、私は意気投合していた広島のK池さんとともに”53番テント”をサハラでの住処に選ぶ。
テントの構造は、先ず横長の絨毯が敷かれておりそこに幾本かのつっかえ棒が屋根になる黒い布を支える形で構成されている。
布をつっかえているだけなので当たり前だが横幕などはない。風通し抜群である。
私はテントの一番端のスペースへ陣取った。このスペースが大会を通しての私の居住区となる。

 

各々のスペースを確保した後は53番テントのメンバーでレストランへ向かう。明日の夜までの食事は大会が賄ってくれる。
野営なので内容は簡素だがちゃんと暖められており、ビールやワインも楽しめる。
まともな食事が取れるのも明日の夜まで。そう思いありがたくいただく。
食事を終え、住処へ戻るためテント群を通過してるとどこからかテノールが聴こえてくる。
歌声が聴こえる方を見みてると大柄な白人男性が讃美歌(?)を歌っていた。

様々な文化がこのビバークに集まり、いたる所で展開されている。この光景もまたサハラマラソンの大きな魅力の一つであろう。
文化交流としてとりあえず彼の歌声に「 ブラボー! 」と賛辞を贈っておいた。

53番テントへ戻ると今晩中に自分が使うテント番号を申告する必要があるとの情報が入る。
真っ暗闇の中、バスでもらった用紙の一枚にゼッケン、氏名とともに大きく”53”とテント番号を書き記し、所定の場所へ提出した。
提出の際、明日のテクニカルチェックとメディカルチェックのスケジュールが掲示されているのを見つける。

私のナンバーは”1024”。明日はこのチェックがメインイベントなのでどうやら午後までは暇なようだ。

再びテントに戻り、スーツケースの荷を解き寝床を作る。
事前に聞いていた予報の通り、この日の夜間は大変な冷え込みで、寝袋の上にコートをかけてなんとか暖をとれるといったところだった。
寒さと、そしていま自分がいるのは憧れのサハラなのだという興奮が相まってなかなか寝付くことができず、仕方ないので一眼レフカメラを取り出し、レンズに三脚、リモートスイッチを取り付けて天体撮影を試みた。
が、あまり上手くいかない。
まあいいか。バスのときと同じことを思う。チャンスはこれからいくらでもあるんだ。

 

vol.4へ >>

1 2